近年、メール配信業界では話題になっている「amp for email」ですが、聞いたことはあるけど詳しくは知らない、もしくは初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、amp for emailとはどのようなものなのか、特徴や実際どのように導入するのかについて解説しています。
AMPとは?
まずはAMP(Accelerated Mobile Pages)が何なのかについて解説します。
AMPは高速かつスムーズに表示されるWebページを簡単に作成できるようにするオープンソースのHTMLフレームワークで、Web閲覧を更に円滑にするための新しいテクノロジーです。近年は他の分野にも応用されメールや広告、Instagramのストーリーなどでも使用されています。
AMPを使うと、モバイルページの表示速度が約4倍、データ量が約1/10になると言われています。
あらかじめサーバーにWebページのデータを一時的に保存することで、あらかじめ用意しておいたキャッシュを表示させ、読み込み時間を短縮しているというのがAMPの仕組みです。
非常に分かり安く解説している動画があったのでご紹介させていただきます。
【SEO対策】AMPに対応してページの表示速度をアップさせよう!
引用:デジマチャンネル
要するに「今まで以上にサクサクとサイトを表示できるようにするための技術」です。
それをメールに応用したものが「amp for email」というわけです。
amp for email と従来のメールの違い
従来のメールというのは「テキスト形式」「HTML形式」の2種類でした。これに新たにampメールという形式が加わることになりますが、本格的な導入には時間がかかると言われています。後々詳しく解説していきますがampメールが根付くのはもう少し先と言えるでしょう。
現在はHTMLメールが主流となっていますが、それが静のメールデザインとするなら、amp for emailは動のメールデザインが可能になるイメージです。
こちらのデモ画像はGoogle公式サイトの「Google Developers」から引用しました。メール内でカルーセルやタブ切り替えなども可能で、まるでWebサイトの一部がそのままメールとして送られてきているように感じます。
メールの本文中の中にも階層があるような感じで、将来的にはフォーム入力や商品の決済もメール本文中で可能になり「本文中のリンクをクリック→サイト訪問」という手間が無くなることが予想されます。
amp for emailのメリット・デメリット
そんなamp for emailですが、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。まだまだ新しい技術ですからそれらの点についても簡単に解説します。
メリット1. 従来には無い表現方法が使える
デモ画像を見ていただければわかる通り、従来のメールとは一線を画すようなデザインのメールを作成することができます。
読者にはそれだけで大きなインパクトを与えることができるので、amp for emailを使っている企業が少ない状況であれば、競合他社と大きく差別化することができるでしょう。
メリット2. メルマガ内で完結できることが増える
amp for emailでは、商品の決済や問い合わせ、他商品との比較をメールの中で行うことができます。
読者側からするとメール内で取引が完結するので非常に便利で、配信者側としてもコンバージョン経路を一つ省くことができるので、メール開封以降の離脱率を下げることができるでしょう。
上記のデモ画像では、メール内でホテルの比較や情報閲覧ができる様子が確認できます。いちいちサイトにアクセスしなくていいので、読者からすると非常に便利です。
こうなると、メールは情報の通知やリマインド機能に止まらず、Webサイト代わりのツールとして使えるようになることが予想されます。
次の項目ではamp for emailのデメリットを紹介します。
デメリット1. amp for emailは受信できる環境が整ってない
まず大きなデメリットの一つに「まだ浸透していない新しい技術ゆえ、ampメールを受信できる環境が整っていない」という点があります。
GmailやOutlookなどは、ampメールの受信が可能なメーラーですが、メールを受信するためには受信者側で設定を変更する必要があります。それに加え、ampメールを受信したい送信者のアドレスを登録する必要があるので、現状ではampメールを一般ユーザーに届けるのは困難です。
受信側の協力がなければ送受信ができないという点が、ampメールの環境が整っていない理由になります。
デメリット2. メール配信システムの変更が必要
メルマガ配信を行っている方は「メール配信システム」を利用していることが多いと思いますが、現段階ではampメールの配信に対応したメール配信システムはほとんどありません。
調べたところ、海外のメールシステムでは対応しているところもあるようですが、メール配信システムを使った大量配信を行いたい場合にはそちらへの変更が必要です。
デメリット3. メール作成が難しい
ampメールは手軽に作成することが難しく一通のメールを作るのに時間がかかってしまいます。最近はHTMLメールが主流となっていますが、実はHTMLメールも一から自分で作るとなると非常に時間がかかります。
この作成を効率化してくれているのが「HTMLメール作成エディタ機能」ですが、まだまだリリースされたばかりの技術なのでそうしたエディタもありません。
本格的にこの形式のメールが普及するまでの過渡期の段階では、テキストメール、HTMLメール、ampメールの全てに対応できるような形式でメールを作らなければなりません。
amp for email を実際に作成するには
ampメールの作成にはGoogleが提供している「Playground」を利用するのがおすすめです。ブラウザ上でプレビューしながらコードの記述ができます。
まずは左上の部分を「AMP for Email」に変えましょう。サポートされている機能などは、AMPガイドサイトから確認することができます。
こちらのガイドサイトではソースコードが確認できる他、開発に役立つツールも提供されています。
専門知識のある方であればこれらを参考にampメールの作成を行うことができるでしょう。
テスト配信であればPlaygroundから行うか、以下のamp for emailに対応しているメール配信システムを活用しましょう。
全て海外のメール配信システムとなりますが、国内での配信環境はまだまだ整っていない状況です。
amp for emailを受信するには
amp for emailを受信するには、別途受信側も設定が必要です。その設定のやり方もGmailを例に解説します。
「右上のギアマーク→全ての設定→ 動的メール→デベロッパー向けの設定」に進むと上記のような画面になりますので、アドレスの指定を行います。
現段階では受信者側はこのような設定が必要になるので、ampメールを配信したいのであればこのような設定が必要な旨を読者に伝える必要があります。
amp for email はまだ未完成な配信手法
ここまで解説してきたように、まだまだamp for emailは開発途中の技術です。
日本においては、Pinterest、Booking.com、スケジュール調整サービスのDoodleなどがampメールを利用しているようですが、普及率はまだまだです。
とはいえ「メールとWebサイトは別で操作する必要がある」という従来の概念を「メールだけで全て完結する」ものに変える可能性があるのがamp for emailです。今後ビジネス目的での利用が増えることが予想されています。
まとめ
以上、amp for emailとはどのような特徴があるのか、導入はどのようにすればいいのか解説してきました。
メルマガは読まれているのに、サイトの訪問や実際の購入には至らない。
メールは読まれているのに問い合わせには繋がらない。
1通のメールにそれら全ての行為を集約したamp メールはそんなメルマガの悩みを解消してくれるかもしれません。
ただ現状は、送受信の環境が整っておらず、読者にampメールを届けるには受信側の協力が必要です。メール配信に関わる仕事をしているようであれば、ぜひとも今後の動向に注目しておきたいところです。