ビジネスメールで頻繁に使用される「五月雨式に申し訳ございません」
ビジネスメールで初めてみた表現で、具体的にどのような使い方をすればいいのか悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
ビジネスシーンにおいて言葉遣いや表現が間違っていると、相手から信頼してもらえない可能性もあります。適切な表現を知り、適切な言葉を使うことはビジネスパーソンにとって当然のことと言えるでしょう。
今回は日常生活ではあまり馴染みがない「五月雨式に申し訳ございません」の意味や使い方、注意点について詳細に解説していきます。
「五月雨式に申し訳ございません」の意味
「五月雨式に申し訳ございません」とは、「何かが続いてしまい、申し訳ない」という表現になります。
この表現は、普段の会話ではあまり使われませんが、ビジネスのメールやチャットでよく見られます。特に、何か別の要件などを立て続けに連絡してしまい、相手に迷惑をかけてしまったと感じるときに使います。
「五月雨式に」の意味と読み方
「五月雨式」は「さみだれしき」が正しい読み方です。
この言葉の意味は「だらだら続くこと」や「繰り返し続くこと」です。つまり、何かがずっと続いていく様子を表現しています。
「五月雨式」には謝罪の意味は含まれていません。そのため、相手に謝りたい場合には、「五月雨式に申し訳ございません」といった具体的な謝罪の言葉を加えるといいでしょう。
「五月雨式」の由来と語源
言葉の由来である「五月雨」は、旧暦の5月に降る雨であり、この雨が長引くことから物事が遅れる様子を表しています。
昔の日本では、太陽暦ではなく旧暦という暦を使っていました。旧暦は太陽暦よりも短いので、梅雨のようにだらだらと続く雨が5月から始まることから、「五月雨」になりました。
梅雨の時期は雨が降ったりやんだりと、何日も続く印象があります。そのような「だらだら続いている」ことを言うときに、「五月雨式」という言葉が使われているのです。
「五月雨式に申し訳ございません」の使い方と例文
五月雨式をビジネス上で使用するのは、以下の3つの場面です。
よくあるのが伝え忘れから追記する場面、成果物の分割納品の場面、順次確認の場面です。1つずつ例文をみていきましょう。
伝え忘れからの追記
「五月雨式に申し訳ございません」は、要件を一度に伝えきれず何度も連絡が必要な場面で利用されます。
そのような場面ではメールの冒頭に「五月雨式に申し訳ございません」を使い、連続してメールを送ってしまったことへの謝罪の意味を伝えることができます。
件名: メール追記と〇〇に関するお願い
株式会社〇〇
〇〇様
お世話になっております。
〇〇会社の〇〇です。
五月雨式にご連絡をしてしまい、誠に申し訳ございません。
お伝えが漏れていた内容がありましたので、お手数をおかけしますが、以下の内容をご確認いただけますと幸いです。
〇〇
〇〇
引き続きよろしくお願い申し上げます。
複数回に分けての納品
成果物を一括で納品できず、分割して納品する場合にも使用することができます。先方へ複数納品を行うときに、なにかしらの都合でまとめて納品できない場合もあります。
納品をまとめて行えないと、受取時の手間を増やしてしまうことになりますので、お手数をおかけして申し訳ないという意味を相手に伝えましょう。
株式会社〇〇
〇〇様
お世話になっております。
〇〇会社の〇〇です。
五月雨式の納品となり、申し訳ございません。在庫の都合上、商品を2回に分けて発送させていただきます。第一便は本日中に、第二便は明日中にお届けいたします。
ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんが、何卒ご了承ください。
納品の分割依頼
納品を受ける側として、成果物を順次確認したい場面でも利用されます。しかしながら、複数回に渡って納品するのは送る側にとって、手間を増やしていることに変わりません。
「ご面倒をおかけしますが、五月雨式の納品でも問題ないでしょうか」と伝えると、お手数をおかけして申し訳ないという意味を相手に伝えることができます。
件名: 納品に関するお願い
株式会社〇〇
〇〇様
お世話になっております。
〇〇会社の〇〇です。
配送の件でご連絡をさせていただきました。申し訳ございませんが、五月雨式に発送していただくことは可能でしょうか。当社では各部署での確認が必要な状況でございますため、一括での納品ではスムーズな対応が難しい状況です。
大変恐縮ではございますが、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
「五月雨式に申し訳ございません」を使うシーンやフレーズ
上述した例文はほんの一場面ですが、「五月雨式に申し訳ございません」は汎用的な言葉であらゆるシーンで使うことができます。
以下、よく使われるシーンやフレーズをまとめましたので参考にしてください。
- メールで情報を断続的に送る場合:「プロジェクトの進捗に関する情報を五月雨式にお送りしてしまい、申し訳ございません。今後は定期的な報告に努めます。」
- 頻繁に会議の日程を変更する場合:「何度も会議の日程を変更してしまい、五月雨式に申し訳ございません。今後はより計画的に調整いたします。」
- 不定期に連絡を取る必要がある際:「この度はプロジェクト関連で不定期に連絡を取らせていただくことになり、五月雨式に申し訳ございません。」
「五月雨式に申し訳ございません」の注意点
「五月雨式に申し訳ございません」の使用には注意が必要です。以下の3点に留意しましょう。
- 「五月雨式」に謝罪の意味はない
- 「矢継ぎ早」への言い換えは相手を急かす
- 口頭ではほとんど使用されない
「五月雨式」に謝罪の意味はない
「五月雨式」はあくまで物事の長引きや継続的な進行を指す表現であり、直接的な謝罪を含んでいません。
謝罪の気持ちを込めたい場合は、必ず「申し訳ございません」といった言葉をつけて、お詫びの旨を伝えましょう。
「矢継ぎ早」への言い換えは相手を急かす
「五月雨式に申し訳ございません」の言い換えとして「矢継ぎ早に」という表現がありますが、こちらの表現は相手を急かす印象を与えかねません。
「五月雨式に申し訳ございません」はこちら(自社)の都合で何度もメールして申し訳ないといったニュアンスになります。
口頭ではほとんど使用されない
「五月雨式に申し訳ございません」は、口頭でのコミュニケーションにはあまり適していません。
書面での使用に適しているため、ビジネスメールや文書での利用に留めましょう。
「五月雨式に申し訳ございません」の言い換え表現
同じ言葉だけを使ってしまうと、相手に誠意が伝わらない場合がありますので、言い換えの表現も覚えておきましょう。
- 立て続けにすみません
- 度々申し訳ございません
- 断続的に申し訳ございません
それぞれ解説します。
立て続けにすみません
「立て続け」は、短い期間中に何かがまた行われることを指す言葉です。この表現から派生して、「立て続けにすみません」というフレーズが生まれています。
「立て続けにすみません」は短い間にまた頼みごとをする場合によく使われ、使う側だけでなく、使われる側もその状況を感じることが一般的です。
例えば、「先の件で大変お世話になりました後に立て続けにすみません」といった具体的な文言を使うことで、前の事例に感謝の気持ちを表しつつ、再びお願い事をすることを気遣っていることが表現できます。
度々申し訳ございません
「五月雨式」を言い換えると、「度々」「何度も」「頻繁に」といった意味になります。
例えば、仕事でのミスが続いた場合、その繰り返しを表現するときに「度々ミスが発生しました」と言います。このとき、「五月雨式」と同じように、短期間に何度もミスが起きている状況を指しています。
一方で、「度々」は短期間だけでなく、長期間にわたって続く出来事にも使えます。
例えば、長い期間にわたって同じ問題が発生している場合、「度々問題が発生しています」と表現できます。
重ね重ね申し訳ございません
「重ね重ね申し訳ございません」は、謝罪の意味を強調し、何度も謝罪する際に使われる言葉です。この表現は、相手に向けて深い謝罪の気持ちを伝える際に重宝されます。
また、「度々」のように、繰り返し行われる出来事だけでなく、長期間にわたって続く出来事にも適しています。
例えば、長い間にわたってサポートが不十分であった場合、「重ね重ね申し訳ございませんが、サポートが不足しておりました」といった形で使用できます。
さらに、より一層の丁寧さを表現したい場合は、「重ねてお詫び申し上げます」とすることで、より形式的で懇切な印象を与えることができます。
「五月雨式に申し訳ございません」の英語表現
「五月雨式に申し訳ございません」の意味するところは、言い換えると、次のようなニュアンスがあります。
- バラバラと連絡(対応・依頼)してしまいすみません
- 重ねてのメールで失礼します
- たびたびの御連絡すみません
以上を英語で表現しますとこのようになります。
I’m sorry for sending you back repeatedly.
(何度も繰り返しご連絡申し上げてすみません。)
Sorry to keep bothering you.
(何度もお手を煩わせてすみません。)
My apologies for asking so many questions.
(何度もお尋ねしてすみません。)
まとめ
「五月雨式に申し訳ございません」は、何度もメールが続いてしまったことに対するお詫びの表現です。
何度も連絡をしてしまったときや複数回に分けて納品するときなど、ビジネスシーンでよく使われます。
ビジネスにおいて一度に依頼すべきことや伝えるべきことが断続的に次から次へと出てくると、受け取った相手は随時対応しなければなりません。
段取りや対応方法が変わってきた、となれば受け取った相手のスケジュールや段取りも変えることになり、不信感も出てきます。
受け取り相手に対して丁寧に謝罪するためにも、「五月雨式に申し訳ございません」を活用しましょう。